あの運動も斜方投射?導出簡単な公式も紹介!
今回は斜方投射について勉強します。
今まで学んだ物理運動の中で、日常生活で最も見られる物理運動かもしれません。
斜方投射とはどういう運動か、考え方や公式も説明します。
この運動も難しい運動ではないですし、公式を覚える必要性はやはりありません。
最後に例題を載せていますが、この問題は斜方投射を学ぶ上で基本的な問題でありながら、理解できていないと少し難しい問題になります。
状況をしっかり把握すれば解ける問題なので、ポイントをしっかりと押さえて理解していきましょう。
斜方投射とは?
斜方投射とはどういった運動でしょうか。
ここでは斜方投射の説明と、物理学的に理解するにはどう考えればよいかを説明していきます。
斜方投射って何?
斜方投射とはある高さから斜め上向きに投げ出される運動のことです。
ある高さとは別に地面でも構いません。
投げられた物体はある地点で最高点に達し、その後重力により徐々に落下していきます。
野球選手が投げるボールなどは斜方投射になります。
もちろん、あなたが投げたボールも、蹴り上げたサッカーボールもこの斜方投射に入ります。
小学生のころは男子ならドッジボールなどをやったりして、投げることが多かったと思います。
今までに何回斜方投射を行ったことやら..、3桁は軽く超えそうですね。
ちなみに私は肩力がほぼなかったのでドッジボールではぼこぼこにされていました。
柵越えの大遠投なんて夢のまた夢です。
ところで、前回学んだ水平投射との違いですが、水平投射が水平方向に投げたのに対し、斜方投射は斜め方向への投げだしになります。
斜方投射の特徴
斜方投射の特徴として以下が挙げられます。
- 鉛直方向は鉛直投げ上げと同じ運動をする。
- 水平方向は等速運動をする
斜方投射も水平投射に似た特徴を持っています。
ただしここで注意する点は、水平投射では水平方向の速度は初速度に等しいですが、斜方投射では初速度の水平成分に等しくなります。
注意しましょう。
また斜方投射では最も遠くまで投げるには斜め45°が最も遠くに飛びます。
この理由は別でお話しします。
斜方投射の考え方
水平投射と同じく、斜方投射も鉛直方向と水平方向で分けて考えることで、物体の運動をとらえることができます。
鉛直方向の運動は鉛直投げ上げと同じなので、鉛直投げ上げの公式(=等加速度運動の公式)を使うことができます。
一方で水平方向の運動は等速運動なので水平投射と同じです。
斜方投射の公式
それでは公式を見てみます。
ここで鉛直上向き($y$軸)を正、水平右向き($x$軸)を正とし、物体は水平方向との角度$θ$で斜め上に投射されたとします。
2方向について考えるので、変位も軸に合わせて鉛直方向を$y$、水平方向を$x$と表記します。
同様にして速度の分解で学んだように、物体の鉛直方向の速度を$v_y$、水平方向の速度を$v_x$とします。
ただし、$v^2=v_y^2+v_x^2$(三平方の定理)です。
水平方向
水平方向は等速運動でした。
よって
$$v_x=v_0cos(θ)$$
$$x=v_xt=v_0cos(θ)t$$
$cos$が入ってくると難しく感じますが、これは慣れるしかないです。
鉛直方向
鉛直方向は鉛直投げ上げと同じでした。
よって
$$v_y=v_0sin(θ)+gt$$
$$y=v_0sin(θ)t+\frac{1}{2}gt^2$$
$$v_y^2-(v_0sin(θ))^2=2gy$$
変位は$x$→$y$に表記を変えているので注意してください。
水平方向と鉛直方向の関係
斜方投射も水平投射と同じく鉛直方向と水平方向の2軸に分けて考えることで理解してきました。
斜方投射でも分けた2つを関連付けてみると水平方向と鉛直方向の関係性はどのようになるのでしょうか。
まずは速度についてみてみます。
物体の速度は$v_y$と$v_x$のベクトル和なので、
$$v=\sqrt{v_x^2+v_y^2}$$
これは水平投射でも同じでした。
変位の関係はどうなるでしょうか。
$x=v_0cos(θ)t$ と $y=v_0sin(θ)t+\frac{1}{2}gt^2$ から$t$を消去してみます。
$x=v_0cos(θ)t$を$t=$の形に変形すると$t=\frac{x}{v_0cos(θ)}$なので、代入して
$$y=v_0sin(θ)×\frac{x}{v_0cos(θ)}+\frac{1}{2}g×(\frac{x}{v_0cos(θ)})^2$$
$$y=\frac{sin(θ)x}{cos(θ)}+\frac{g}{2v_0^2cos^2(θ)}x^2$$
$$y=tan(θ)x+\frac{g}{2v_0^2cos^2(θ)}x^2$$
複雑な式になりました。
この式もxの2次関数であるので式変形をすれば、頂点と軸を求めることができます。
計算すると、
$$y=tan(θ)x+\frac{g}{2v_0^2cos^2(θ)}x^2$$
$$y=\frac{g}{2v_0^2cos^2(θ)}(x^2+\frac{2v_0^2cos^2(θ)}{g}tan(θ)x+(\frac{v_0^2cos^2(θ)tan(θ)}{g})^2-(\frac{v_0^2cos^2(θ)tan(θ)}{g})^2)$$
$$y=\frac{g}{2v_o^2cos^2(θ)}(x+\frac{v_0^2cos^2(θ)tan(θ)}{g})^2-\frac{v_o^2sin^2(θ)}{2g}$$
になると思います。
複雑な式だと平方完成は疲れますね。
よって頂点は$(-\frac{v_0^2cos^2(θ)tan(θ)}{g}, -\frac{v_o^2sin^2(θ)}{2g})$、軸は$x=-\frac{v_0^2cos^2(θ)tan(θ)}{g}$となります。
ここで軸もマイナス、頂点もマイナスっておかしくない?って思われるかもしれませんが、重力加速度$g(<0)$で計算していますので、負の値に見えますが実際にはプラスの値になるので問題ありません。
水平投射と同様この式は物体の位置関係を表すため、斜方投射したときの物体の軌道(物体が通る軌跡)を表しています。
この軌跡は放物線ともいわれます。
そして物を放り投げた時にできる運動を放物運動とも言います。
私たちは幼いころから放物運動をやっていたわけです。
小さい頃は生卵を放物運動させたときもありました。
(その後どうなったは、ご想像にお任せします。)
斜方投射の例題
斜方投射の例題としてよくあるのが角度$θ$がいくつのとき最も遠くに物体が飛ぶのか問題です。
体力テストでボール投げみたいなやつがありますが、一番遠くまで飛ばそうと思ったら何度にすればよいのでしょうか。
今回はそれを計算で求めてみます。
初速度を$v_0$、角度を$θ$とします。
物体を投げてから地面に着くまでの時間$t(\neq0)$は$y=0$のときなので、
$$y=v_0sin(θ)t+\frac{1}{2}gt^2=0$$
$$t(v_0sin(θ)+\frac{g}{2}t)=0$$
$$t=-\frac{2v_0sin(θ)}{g}$$
このとき物体の水平距離$x$は、
$$x=v_0cos(θ)t$$
$$x=v_0cos(θ)×(-\frac{2v_0sin(θ)}{g})$$
$$x=-\frac{2v_0^2}{g}sin(θ)cos(θ)$$
$$x=-\frac{2v_0^2}{g}sin(2θ)$$
$x$が最大となるための$θ$は、条件から$0\leθ\le\frac{\pi}{2}$なので、
$$θ=\frac{\pi}{4}=45°$$
以上により、最も遠くまで飛ばすには、角度45°で投げればよいことが分かります。
しかし実際には45°よりも少し低い角度で飛ばしたほうが遠くまで飛びます。
それは、物体を投げている高さがはじめ地面と同じ高さではないからです。
砲丸投げなどでは40°とか41°とかで投げると最も遠くまで飛ぶそうです。
最近は物理演算ソフトがあるのでそういったものでシミュレーションしてみるのも面白いかもしれません。
まとめ
斜方投射を理解できましたか。
水平放射と同様、2軸に分けてあげれば結局は鉛直投げ上げ(等加速度運動)と等速運動の組み合わせです。
いろいろな式が出てきましたが、覚えるべきなのは等加速度運動の公式3つだけで十分です。
後は運動の特徴を当てはめていくだけ!
今回は体力測定で使えそうな?角度を求めてみましたが、ほかにも物理を学べばリアル世界で応用できるかもしれません。
運動の分野も終盤に入っているので、最後まで頑張っていきましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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