あの遊びは鉛直投げ下ろし!公式なんてほとんど無意味?
今回は鉛直投げ下ろしについて勉強します。
自由落下と同様、鉛直投げ下ろしとは何かから説明をして、考え方や公式もご紹介します。
最後は自由落下と組み合わせた例題で、理解を深めていきます。
リアルな世界で鉛直投げ下ろしの運動をすることはほぼないですが、等加速度運動を学ぶ上で基本的な運動の一つなので、これが理解できないと複雑な運動をする物体を理解するのは難しいでしょう。
今後の学びにもつながってくるものなのでしっかり理解していきましょう。
鉛直投げ下ろしとは
鉛直投げ下ろしとはどういった運動でしょうか。
鉛直投げ下ろしとは鉛直下向きに物体を投げ下ろす運動のことです。
重力だけで落下し、それ以外の力は一切加えてはいけません。
もちろん空気抵抗や浮力も例外ではありません。
これらは自由落下のときと同じ条件です。
リアルな世界で鉛直投げ下ろしの行為をとることはほぼないと思います。
強いて言うなら、面子(めんこ)という遊びくらいでしょうか。
小学校の頃に昭和のお遊びとして体験したことしかないですが、全然ひっくりかえせなくて「何が面白いんだこの遊び」とか思ってましたね。
友達はどんどん周りから取り上げて勝ちまくっていて、これが才能かと幼いながら無能を突き付けられたのを記憶しています。
鉛直投げ下ろしの特徴
鉛直投げ下ろしの特徴として以下が挙げられます。
- はじめ($t=0$)鉛直下向きに$v_0>0(m/s)$である
- 物体の大小や重さにかかわらず一定の加速度で落下する
- 加速度は鉛直下向きでその大きさは$9.8(m/s^2)$である
基本的には自由落下と同じです。
唯一自由落下と異なる点は、$t=0$における物体の速さが鉛直下向きに$v_0>0(m/s)$である点です。
自由落下では手に持ったものをさっと手をどけて落としただけですが、鉛直投げ下ろしでは手に持ったものをフンッっと下向きに投げる運動です。
ちょっとイライラしたときに物を床に投げつけるあの行為、そうあれも鉛直投げ下ろしです。
(くれぐれもものに八つ当たりしないようにしたいですね。)
等加速度運動における鉛直投げ下ろしの考え方
鉛直投げ下ろしの特徴を物理学的に表現するとどうなるでしょうか。
自由落下と比較して見てみましょう。
鉛直投げ下ろしの特徴 | 物理学的な表現 | 自由落下の物理学的な表現 |
はじめ($t=0$)鉛直下向きに$v_0>0(m/s)$である | 鉛直上向きを正として$$v_0<0$$ | 初速度$$v_0=0(m/s)$$ |
物体の大小や重さにかかわらず一定の加速度で落下する | 重力加速度を$g$として鉛直上向きを正とすれば、
$$g=-9.8(m/s^2)$$ |
重力加速度を$g$として鉛直上向きを正とすれば、
$$g=-9.8(m/s^2)$$ |
加速度は鉛直下向きでその大きさは$9.8(m/s^2)$である |
初速度以外は同じですね。
ここで今まで初速度$v_0$を鉛直下向きを正としましたが、物理学的な表現では鉛直上向きを正としました。
自由落下のときにもお伝えしましたが、あらゆる物理運動で統一性をもたせるためです。
鉛直投げ下ろしの公式
それでは公式のほうに移っていきましょう。
鉛直上向きを正として重力加速度を$g=-9.8(m/s^2)$、初速度$-v_0(<0)$とすると、
$$v=-v_0+gt$$
$$x=-v_0t+\frac{1}{2}gt^2$$
$$v^2-v_0^2=2gx$$
自由落下と同じようにこれらも等加速度運動の公式からすぐに導けるので覚える必要なんて全くありません。
ということで、導出してみます。
1つ目の公式
$$v=v_0+at=-v_0+gt$$
2つ目の公式
$$x=v_0t+\frac{1}{2}at^2=-v_0t+\frac{1}{2}gt^2$$
3つ目の公式
$$v^2-v_0^2=2ax=2gx$$
ひょっとして自由落下より簡単に導けるのではないでしょうか。
等加速度運動の公式の速度は鉛直上向きを正としてるので、鉛直投げ下げでは$-v_0$になることに注意が必要です。
あとは加速度が重力加速度に置き変わっただけと言ってしまえば、そんな感じです。
鉛直投げ下ろしの特徴をそのまま式に代入しただけなので覚える必要はないですね。
鉛直投げ下ろしと自由落下
前回学んだ自由落下と鉛直投げ下ろしは組み合わさって問題として出されることもあります。
ある高さで自由落下を行い、さらに高い位置で同時に鉛直投げ下ろしをする問題です。
おおよそこのような問題は落下が始まって2物体が同じ高さになるまでの時間と、そのときの高さを求めたり、逆に同じ高さになったときの高さと時間を初期条件として与え、物体Bの初速度や始め2物体がどれだけ離れているかを求めたりするのが多いです。
ということで今回は実際に問題を解いてみたいと思います。
同時刻に2物体を落下させる
まずは2物体が$l$だけ離れているとして同じ高さになるまでの時間とその高さを求めてみます。
物体Bを高さの基準(原点)とすると、時間$t$後の落下したときの座標は
$$y_A=-l+\frac{1}{2}gt^2$$
$$y_B=-v_0t+\frac{1}{2}gt^2$$
この座標が一致すればいいので$y_A=y_B$より
$$-l=-v_ot$$
$$t=\frac{l}{v_0}$$
これで同じ高さになるまでの時間が出ました。
その時の座標はこれを$y_A$に代入して、
$$y_A=-l+\frac{1}{2}g(\frac{l}{v_0})^2$$
$$y_A=-l+\\frac{gl^2}{2v_0^2}
座標が出てきました。
では今度は逆に高さと時間から物体Bの初速度$v_0$と距離$l$を求めてみます。
物体Bの初期高さを原点として同じ高さになるまでの時間を$t$、その高さを$-h$とします。
物体Aについて
$$-h=-l+\frac{1}{2}gt^2 ・・・①$$
$$l=h+\frac{1}{2}gt^2 ・・・②$$
これで距離$l$がでました。
また物体Bについて
$$-h=-v_0t+\frac{1}{2}gt^2$$
なので式①を代入して、
$$-l=-v_0t$$
さらに式②を代入すれば
$$v_0=-\frac{l}{t}=\frac{h}{t}+\frac{1}{2}gt$$
これで初速度も出すことができました。
例として2つの問題を出しましたが、この系の問題は他にも出すことができます。
初期条件を2つ与えれば解くことができます。
このような問題を解くうえで重要なのは同じ高さになるところから等式を作ることと、そのときの時間はどちらの物体も同じということです。
ここに気づければ後は地道に公式から求めていくだけです。
またこの系ではどんな距離であっても初速度が0でない限り時間が経てばいずれ同じ高さになることがわかると思います。
落下時刻をずらして落下させる
時刻をずらして落下させるとどうなるでしょうか。
$t_1$だけずらして鉛直投げ下げを行ったとして最初の問題を解いてみると、ちょっと複雑にはなりますが、
$$y_A=-l+\frac{1}{2}gt^2$$
$$y_B=-v_0t+\frac{1}{2}g(t-t_1)^2$$
となります。
あとは解き方は一緒です。
しかし、この系では同じ高さにならない場合があります。
ここではそれを求めてみます。
同じ高さにならないということは物体Bの座標が常に物体Aより上にあるので、
$$y_B\ge y_A$$
$$-v_0t+\frac{1}{2}g(t-t_1)^2\ge-l+\frac{1}{2}gt^2$$
$$-l-gtt_1+\frac{1}{2}gt_1^2\ge-l$$
$$-gtt_1+\frac{1}{2}gt_1^2\ge0$$
$$-t+\frac{1}{2}t_1\ge0$$
$$-\frac{l}{v_0}+\frac{1}{2}t_1\ge0$$
$$v_0\ge\frac{2l}{t_1}$$
これが初速度の条件です。
これを満たさない限りは追いつくことができません。
まとめ
鉛直投げ下ろしを理解できましたか。
自由落下よりも簡単に公式が出てくるのではないでしょうか。
もうこの公式を覚えるなんて馬鹿馬鹿しいと思えてきたと思います。
習った当初は私も必死に覚えようとしていましたが、どちら向きを正にとるかで符号が変わってしまうし、せっかく覚えたのに訳が分からなくなるんですよね。
ある試験で分からなくなって等加速度運動だからって思って3つの公式で解いたら解けちゃったんですよね。
この記事や前回の記事を読んだ人なら当たり前の話なんですけどね。
今回は自由落下と鉛直投げ下ろしを組み合わせて実際に問題を解いてみましたが、ある程度パターンさえわかってしまえばあとは3つの公式だけで解くことはできます。
苦手な人はまずはいくつかのパターンを知ることから始めてみましょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
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